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東京中野区の解体事故報道を振り返って


東京都中野区での事故

大惨事につながりかねない内容

先日、夕方のニュースで解体工事の事故が話題に上がりました。

21日午後3時40分ごろ、東京・中野区で「解体工事中の建物が倒れてきた」と目撃した男性から110番通報がありました。

警視庁や東京消防庁によりますと、3階建て専門学校の外階段を重機で解体中に、隣の住宅側に傾いたということです。けが人はいないということです。

外階段を撤去する作業が行われていて、警視庁は建物の前の道路を通行止めにしています。現場は、JR東中野駅から北西におよそ200メートル離れた住宅街です

TBS News

幸いなことにけが人は出なかったものの、あわや大惨事につながりかねない内容です。発見した通行人の方や、近隣の方はさぞ怖い思いをされたことと思います。

工事の原因を検証する

直接的な事故原因

今回の事故は何故起きてしまったのでしょうか?直接的な原因となっているのは、外階段を支える役割の壁が外階段の荷重に耐えられなかった点です。

一般的に、ビルやマンション等の外階段は建物の支えを前提として構造が成立するように設計されており、建物無しの状態では非常に不安定です。今回の現場では、外階段を支えるために建物の壁の一部を残しながら解体が進められていましたが、写真からは支えの壁ごと倒れてしまっていることが確認できます。

どうすれば事故は起きなかったか

それでは、どうすれば事故を防ぐことができたのでしょうか?以下は全て「たられば」の話になってしまいますが、回避策を考えてみました。

支えの壁をもっと沢山残すという判断をする

一般的な解体現場では、構造計算をしながら解体手順を考えるようなことはしないため、多くの場合は現場責任者の経験と勘が頼りになります。「安全を期すためにもっと壁を残すべきだ」という判断が下されていれば、違った結果になったと思われます。

外階段を細かく砕きながら壊す

現場写真を見る限り「外階段を手前に引き倒してから砕く」という工事意図が見受けられます。階段を倒して地面でコンクリートを砕いたほうが作業は効率的ですが、壁が反発して反対側に倒れてしまうリスクもあります。「引き倒さずに細かく砕く」という手順で作業を進めれば、事故は防げたかもしれません。

 

外階段を先に取り壊す

外階段を先に取り壊すという方法も事故の回避につながります。今回の現場は建物が密接しているため現実的な方法ではありませんが、十分なスペースが確保できる場所であれば有効な手段です。

今後、同様の事故を起こさないためのポイント

解体工事会社が気をつけるべきポイント

スキルの向上と安全配慮に努める

以前から、建設業界では労働者の減少と高齢化が問題となっていますが、解体業界においても優秀な人材を確保することが簡単ではありません。その結果として、必要人数未満での工事を強いられたり、スキルの不十分な作業員が工事を進めてしまうこともあります。

解体工事の中でも、今回のようなRC造の取り壊しは近隣への影響が大きくリスクも高いため、重機を運転するオペレーターには「コンクリート造の工作物の解体等作業主任者」という専門の資格が必要となります。しかし、このような資格を持たずに工事をしてしまっている工事会社も少なからず存在します。

事故を防止するためには、作業員のスキル向上と安全配慮に努めることが最も大切なポイントです。

コンクリート造の工作物の解体等作業主任者(コンクリートぞうのこうさくぶつのかいたいとうさぎょうしゅにんしゃ)は、労働安全衛生法により高さが5m以上コンクリート造の工作物の解体作業等を行う場合に配置しなければならないとされている者である。コンクリート造の工作物の解体等作業主任者技能講習を修了した者でなければ、コンクリート造の工作物の解体等作業主任者の業務を行う事が出来ない。

Wikipedia

無理な工事は請け負わない

無理な工事は請け負わないということも大切です。

解体工事は一般消費者が接することが少なく、相場や工期に対して正しい理解を持っている発注者は非常にまれです。そのため、工事費用や工期に対して、発注者から無理な要求がされることも珍しくありません。

無理な工事は事故の引き金となります。解体工事会社はプロとしての自覚を持ち、無理な要望は毅然とした態度でお断りすることも重要です。

発注者が気をつけるべきポイント

解体は事故と隣り合わせであることを認識する

まず大切なのは、解体は事故と隣り合わせの工事であることを認識することです。

事故のニュースを見ると、「自分には起こりえないテレビの向こう側の話」として感じてしまう方も少なくないと思います。しかし、今回の事故現場は特殊な事例などではなく、ごく一般的な鉄筋コンクリート像の解体工事です。

発注者は、どこの現場でもこのような事故が起こりうることを理解しなくてはなりません。

適切な工事を阻害するような交渉をしない

もう一つ大切なのは、適切な工事を阻害するような交渉をしないことです。

工事会社が適切かつ安全に工事を進めるためには、十分な予算や工期が確保されていることが大切です。しかし、発注者から極端な値引き交渉や工期短縮の要求を行い、工事会社がそれに応じざるを得ない事態となると、その代償として事故のリスクは上がります。

「少しでも工事を安くしたい」という気持ちは多くの発注者に共通のものですが、度を過ぎた要求は控えるべきでしょう。

まとめ

解体工事会社と発注者の双方が意識を高めることが大切

安全な解体工事を実現するためには、工事会社と発注者の双方が安全への意識を高めることが大切です。

弊社としても、両社に適切な情報発信をすることで意識向上と事故防止を促進していきたいです。

この記事を書いた人

川口 哲平

川口 哲平

代表取締役/CEO クルー全員が「自分自身の可能性」と「働くことの喜び」を見出しながら前進し、全ての人に「楽しく豊かな暮らし」を提供できるよう、尽力していきます。

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